出逢いは銃声の中でsuddenly


 ジャングルの中に一人の14、5歳ぐらいの少年がいる。
 その、少年は世間一般にかっこいいと言われるほどの容姿である。
 どうして、そんな少年がジャングルの中にいるというと……



 昨日の昼にリビングに呼び出された俺こと相沢祐一は、今、机を挟んで父さんと向かい合ってイスに座っている。
 父さんの顔はものすごく真剣だった。
 そして、父さんが言葉を発した。
「なあ、祐一、何かこう変わった刺激が欲しいと思わないか?」
「欲しいと言ったらどうなるんだ?」
 そう、この時に興味本意に曖昧に答えたのが全ての始まりだった。
「こうなるんだ」と、言うと父さんはパチッンと指を鳴らした。
 すると、リビングのドアから黒尽くめのガタイのいい男がいきなり入って来て、俺は、何もできずそのままイスごと拉致られた。
 その時に、後ろから父さんが頑張れよと言った事が耳に入った。
 それから、一晩掛けてこのジャングルに連れて来られた。



 あま、そんな事があり今、俺はジャングルの中を歩いている訳だ。
 歩いてから一時間位経過した時だった。
 ジャングルの奥から物音がしたのだ。
 繁みをかき分ける音。
 数人の息づかいと足音。
 そして、なにかが破裂するような連続音。
「銃声!?」
 正真正銘の発砲音を聞き、祐一は思わず声を上げた。
 それと同時に繁みの中から、女性の身体が現れた。
 いきなりのことで逃げるどころか、考える暇すらなかった。
 再び銃声が聞こえた。音が大きく聞こえ近ずいてくる事がわかる。
 ついには、銃弾までもが飛んできた。
 逃げようとして足をもつれさせ、女性の上に倒れこむ。
 弾丸が服をかすめた。そして、祐一は女性にのしかかるようになる。
 しかもそこは、斜面になっていた。
 女性を庇う形になり「ウワーッ!」と、言う声と共に女性を抱えたまま、斜面を滑り落ちていった。



 気は遠かったが、意識を失うほどではなかった。
 柔らかな手の感触が額にあった。ゆっくりなぞっている。
 女性が薄目を開けている祐一の顔を、じっとみつめていた。
 綺麗な人だな、というのが第一印象だった。
 顔の作りが欧州系の典型的な美人だった。
 薄い茶色の瞳に整った鼻。真っ白な肌。
 自分より年上だろうということ。
 そして、何よりも特徴なのは銀色の風になびく髪だった。
「大丈夫ですか?」
 女性は心配そうな口調だった。
「は、はい」
 祐一は曖昧に返事をした。
 よっこらせと身体を起こす。
 そして、服などについている土を掃う。
 痛みは多少あるが動くには問題は無いようだ。
 女性はというと気配をうかがうように、斜面の様子を見ていた。
 銃声はしない。
 先ほどの騒ぎなどなかったかのように、静かになっていた。
 安心したのか、女性は祐一に向き直る。
「もう敵はおりません。引き上げたようです」
 なんだか分からないがやっと一息つけるらしい。
 敵といういみがわからなかったが。
「危険は排除しました。まき込んでしまいましたが、心配ありません」
「そうですか…」
 危険はなくなったようである。
「ありがとう」
「え……」
 何故か、女性の顔が朱に染まった。
「あ、いや、なんか助けられたみたいだから」
「そんな…。当然のことです。私のせいですから」
 女性は赤面しながら、祐一に近寄った。
「お怪我があるようであれば、おっしゃってください。すぐに手当ていたします」
「いや…大丈夫だと思います」
「いけません」
 少し怒ったような声。
「いや、でも」
「駄目です。怪我は初期治療が一番肝心なのです。ご自分では平気と思っているようでも、万が一のことを……」
 祐一は慌てて遮った。冷静な女性に見えるが、本気で祐一を案じているように思える。
 嬉しいことではあるが、その反面、しつこいくらいの世話やきでもある。
 世話、で気付いた。
 女性の服装を良く見てみる。
 紺色で、スリーブに余裕を持たせたブラウス。
 裾の広がったひらひらのスカート。
 白い前掛け。ひだのついたカチューシャ。
 まさに、それはメイドの格好だった。
 何故にメイド? 
 ジャングルの中でメイド?
「なにか?」
 祐一の視線に気付き、聞き返してくる。
「あの、…その格好……」
「なにか、へんですか?」
 女性はいかにも、今の格好が当然という感じである。
「そのどうしてメイド服なんですか?」
「それは、私がメイドだからです」
「じゃあ、どうしてメイドさんが銃を持った奴に追われているんですか?」
「それは、敵だからです」
 そして、俺が考えることは一つだった。
 俺は、これから如何したらいいんだろうか?と、いう疑問。
「あの、メイドさん」
「はい、なんですか?。それと私のことはリーラと申します」
「じゃあ、リーラさん」
「違います、私のことはリーラと呼び捨てにして下さい。後、敬語はおやめ下さい。ご主人様」
 ご主人様?。誰が……。
 て、俺しかいないじゃん。
 でも、どうして俺が?
「あの、どうしてご主人様なんですか?」
「ご主人様はご主人様です。それ以上それ以下でもありません。それに、また敬語をお使いになっておられます」
 どうやら、言い方が悪かったらしい。
「リーラはどうして俺のことをご主人様と言うんだ?。 それに、俺には相沢祐一という名前があるんだ。だから俺のことは名前で呼んでくれないか」
「はい、わかりました。祐一様」
「祐一様の様は外してくれないか」
「……」
 だが、俺の願いは聞き入れてくれそうにないようだ。
 リーラが私を捨てるんですねという雰囲気を身にまとって、俺を上目遣いで見ている。
 しかし、俺はここで負けるわけにはいかない。
「祐一様でいいです」
 でも、あっさり負けました。
 リーラは呼んでいいと言うと、先ほどと変わって俺に微笑んでいた。
 だから、俺もこの微笑が見れるならいいかと思った。
「ところで、リーラ、これから如何するんだ?」
「まず、敵を排除します。次に、敵の本拠基地を消します。その後、祐一様のお家に行きお父様、お母様にご挨拶です」
「それで、俺は何をすれば?」
「祐一様は御自分のみをお守りいただくだけです」
 釈然としない返答をもらい作戦?を実行に移した。
 あ〜 生きてるって素晴らしい。
 思わずそう言いたくなるってものだ。
 その道のりは、凄かったの一言に尽きる。
 リーラが敵の本拠基地を文字通り消した事には何もいえなかった。
 そして、俺の活躍はもちろん……。



 無かった。



 そして、いま、俺とリーラは相沢家の前にいる。
 そして、俺は「ただいま」と言って入った。
 すると、後ろから「お帰りなさいませ、祐一様」と言われ
 だから。
 もう一度。
「ただいま、リーラ」



 後日談
 俺が家に入ると其処には父さんがいた。
「祐一、お前って奴は……」
 そして、父さんは滝のように涙を流しながら、明後日の方へ走っていった。
 しかも、「うらやましいぞ〜」と、言いながらだった。
 その後、空き地の土管の中で膝を抱えて泣いている所を発見されたとさ。


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